フルボディトラッキング)を調べ始めると、二種類の写真が出てきます。部屋の高いところに小さな箱を据え付けている写真と、太ももや足首にバンドを巻いている写真です。どちらも「フルトラ」と呼ばれていて、並べられると、何がどう違うのかが見えません。
分かれているのは、位置をどこから測るかです。部屋に置いた機器から測るのか、体に付けたセンサーで測るのか。そしてVRChat公式ドキュメントの「Full-Body Tracking」を読むと、VRChat の側がそれをどう受け取っているかも書かれています。
読み終えると、製品ページを開いたときに、その製品がどちらの測り方なのか、部屋に何を置くことになるのか、毎回の準備がどこに増えるのかが見分けられます。
VRChatが見ているのは、SteamVRにつながった機器です
VRChat は、パソコンでVRゴーグルや周辺機器を動かすためのソフト(SteamVR)を通して、体に付けた機器(トラッカー)を受け取ります。公式ドキュメントには、必要なトラッカーを SteamVR とペアリングした状態で VRChat を起動すると、自動で「Full-Body」モードとして検出され(automatically detect)、画面に項目が増える、と書かれています。
どのトラッカーをどこに割り当てるかも、VRChat の中ではなく SteamVR の側で決めます。SteamVR のメニューから「Manage Vive Trackers」(つないだトラッカーを管理する画面)を開き、Left Foot, Right Foot, or Waist(左足・右足・腰)に割り当てる、という手順です。
面白いのはこの先です。公式ドキュメントは割り当て先について、どの点に割り当てるかは実のところあまり重要ではない——どれも Held in Hand(手に持っている機器として扱う設定)になっていない限りは、と書いています。そのうえで、他のアプリとの互換や将来の変更を考えると、正しく割り当てておくのがおそらく最善だ、とも添えています。
つまり VRChat の側は、その機器が何をどう測っているかまでは見ていません。SteamVR の上にトラッカーとして並んでいるかどうかを見ています。方式の違いが出るのは、VRChat の中ではなく、部屋と体の側です。
公式ドキュメントが挙げる機器と、追える場所
公式ドキュメントが対応機器として名前を挙げているのは、Lighthouse ecosystem trackers と書かれた系統です。具体名として出てくるのは HTC Vive Trackers と Tundra Trackers。ここでいう Lighthouse 方式とは、部屋の壁や高い場所に設置した装置(SteamVR Base Station)から、対応する機器の位置を測るやり方です。位置の基準は、部屋の側にあります。
追える場所として挙がっているのは5つです。
- 足(
Feet) - 膝(
Knees) - 腰(
Hip) - 胸(
Chest) - 肘+肩(
Elbows + Shoulders。トラッカー1個で肘と肩の両方を制御する。must be worn above the elbow=肘より上に装着する)
追加できる数は、ヘッドセットとコントローラーとは別に最大8個まで(a maximum of eight additional trackers)。「3点」と呼ばれるのは、腰と両足の3個です(内訳は公式には書かれておらず、編集部の整理です)。
部屋に置いて測る方式と、体に付けて測る方式
もう一方は、体に付けたセンサーで向きや動きを測る方式(IMU方式)です。センサーが測るのは「どちらを向いて、どう動いたか」で、部屋のどこにいるかという基準はセンサーの中にはありません。そのため製品によっては、カメラなどで位置を測って補う仕組みを組み合わせます。どのカメラが何を見て、何を直しているのかは製品ごとに違うので、そこは製品ページの説明を読んでください。
VRChat公式ドキュメントの Full-Body Tracking のページに、この方式の記載はありません。ページに載っているのは、Lighthouse 方式の機器と、その設定手順です。
体に付けて測る方式の製品は複数あります。このソーシャルVRニュース&ガイドを発行しているのは、その方式の製品 Opsens・Opsens+ を作っている会社です。Opsens+ の装着点は胸・腰・左右太もも・左右足首の6点、Opsens は腰・左右足首の3点。電源は単4電池1本で、400時間もちます。腰と足の動きをアバターへ渡すために何をそろえることになるのかは、Opsens+の仕組みと価格のページにまとまっています。他社の装着型製品の装着点や電源は、この記事では確認していません。
手間はどちらに移るのか
部屋に置いて測る方式では、設置する場所が要ります。壁や高いところに装置を据え、電源を取り、部屋の家具を動かしたら置き直す。そのかわり、体に付けるのはトラッカーだけです。
体に付けて測る方式では、置き場所の代わりに、体に付ける手順が毎回あります。カメラを併せて使う製品なら、その置き場所も要ります。
VRChat 側の手順は、どちらでも同じ形になります。SteamVR の上にトラッカーとして見えていれば Full-Body モードとして扱われ、クイックメニューの Calibrate FBT を押して、実際の姿勢とアバターの姿勢を合わせる作業(キャリブレーション)から始まります。公式ドキュメントが注意している点を3つだけ挙げます。
- 設定の身長(Height)を正しくしておく。ずれていると足が床を突き抜けます(
go through the floor) - プレイスペース(VRで遊ぶために確保した、実際の部屋の範囲)を、
OpenVR Advanced SettingsやPlayspace Moverでずらしたまま合わせない - 頭を上げてまっすぐ前を見た状態で、両方の Interact ボタン(
both Interact buttons。通常はトリガー)を同時に押す
部屋に置く場所はありますか。毎回の付け外しは、手間に感じるほうですか。ここが、方式を選ぶときのいちばん大きい違いです。
買う前に確認する8つの項目
どちらの方式も、確認する項目は同じです。この記事で確認できたところと、公式ドキュメントに書かれていないところを、そのまま並べます。
| 確認すること | 部屋に置いて測る方式 | 体に付けて測る方式 |
|---|---|---|
| 使えるVRゴーグル | VRゴーグルをパソコンにつないで遊ぶ方法(PCVR)で、SteamVR を通して使う。対応するVRゴーグルの一覧は、公式ドキュメントのこのページには記載なし | 同じく SteamVR を通して使う。対応するVRゴーグルは製品ごとに違い、公式ドキュメントに記載なし |
| 部屋に置く機器 | 壁や高い場所に設置する装置(SteamVR Base Station)が要る | 製品ごとに違う。位置を補うためのカメラを置く製品もある |
| 体に付ける機器 | 足・膝・腰・胸・肘+肩の各点にトラッカー。ヘッドセットとコントローラーとは別に最大8個まで | 製品ごとに決まっている(Opsens+ は胸・腰・左右太もも・左右足首の6点、Opsens は腰・左右足首の3点)。他社製品の装着点は、この記事では確認していない |
| 毎回の準備 | VRChat 側はクイックメニューの Calibrate FBT から姿勢合わせ。SteamVR での割り当ては初回に行う | VRChat 側は同じ。製品側の準備(装着・電源・接続)は各メーカーの説明を読む |
| 充電・電池交換 | 製品ごとに違い、公式ドキュメントに記載なし | 製品ごとに違い、公式ドキュメントに記載なし(Opsens・Opsens+ の電池は本文のとおり) |
| 使用に必要な機器を含む価格 | 製品ごとに違う。この記事では個別製品の価格を扱わない | 製品ごとに違う。この記事では個別製品の価格を扱わない |
| 向いている使い方 | 性能の順位は編集部で実測していないため付けない。部屋に据え置ける場所があるかで選び方が変わる | 同じく順位は付けない。毎回の付け外しをどう感じるかで選び方が変わる |
| 購入前に確認すること | SteamVR 上でトラッカーとして認識されるかを製品ページで読む。対応する部屋の広さと設置高さも読む | SteamVR 上でトラッカーとして認識されるかを製品ページで読む。カメラを使う製品は、その置き場所の条件も読む |
公式ドキュメントは、この仕組み自体を experimental(実験的)と明記しています。アップデートで挙動が変わることがあるので、動きがおかしくなったら、まず公式のリリースノートを見るのが早道です。なお同じページには、Lighthouse 方式を挙げたうえでそれ以外の方法は公式には支援しない(does not officially support)と書かれ、続けて、他の機材(such as the Kinect)でうまくいっている人もいて、それで動いているなら構わない、とも書かれています。
次に読むもの
部屋に置いて測るか、体に付けて測るか。違いは、位置の基準を部屋に置くかセンサー側に置くかと、手間が置き場所と付け外しのどちらへ寄るかでした。VRChat の側は、SteamVR の上にトラッカーとして見えていれば、どちらも同じように扱います。
次にフルトラの写真を見かけたら、脚のバンドだけでなく、部屋の隅や棚の上も見てみてください。どちらの方式なのかが、写真1枚で見分けられるようになります。
出典
- VRChat公式ドキュメント「Full-Body Tracking」:https://docs.vrchat.com/docs/full-body-tracking (2026年9月12日確認)